パイオニアのテラヘルツスキャナー,文化財を調査

パイオニアのテラヘルツスキャナーが,昨年行われた愛知県美術館に所蔵されている「木村定三コレクション<黒漆厨子>」の修復前調査における内部構造計測で活用された(ニュースリリース)。

名古屋市にある愛知県美術館は,紀元前3世紀から現代まで約8,000件の作品・資料を所蔵,展示している。著名な美術収集家 故木村定三氏とその遺族から寄贈された作品の一つである黒漆厨子は,その内部に14世紀に制作されたとされる仏画が張られた美術史的に価値の高い文化財。

同美術館は,黒漆厨子内部の劣化した仏画を修復するにあたり,同厨子の内部構造を把握するための修復前調査を奈良文化財研究所に依頼した。

“テラヘルツ波”は,布や紙,木,プラスチック,陶磁器を透過する一方,金属や水は透過しない,光と電波の特性を兼ね備えた電磁波。この特性を活かしたテラヘルツスキャナーは,物体内部の透過像を取得できるので,文化財などの保守・修復作業においても対象物を解体することなく内部構造を計測することができる。

昨年,同調査を受託した奈良文化財研究所により,パイオニアの小型・軽量なハンディヘッド型テラヘルツスキャナーを用いた計測が行なわれ,その結果判明した内部構造をもとに黒漆厨子の修復方法が決定された。同厨子の修復作業は,本年2月より奈良国立博物館内文化財修理所で行なわれている。

同社は,この件のような文化財の計測のほかに,一般建造物の剥離確認用途やセキュリティ用途など,テラヘルツ波を有効に活用できるさまざまな用途の検討を進めている。

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