産総研,偽造不可能な有機タグデバイスを開発

産業技術総合研究所(産総研)は,有機デバイスに特有のばらつきを利用して偽造を困難にするセキュリティータグ回路を開発した(ニュースリリース)。

一部の製品では,個々の製品に固有の番号を付加して,トレーサービリティーを向上させ真贋判定にも役立てている。しかし,バーコードやQRコードなどの印刷された情報や,集積回路に電気的に記録された情報は複製が可能なため,今後は,偽造困難なIDタグなどを利用した,真贋を区別できる製品の需要が高まることが予想される。

今回,大気中での安定性が高い有機半導体と,有機材料と無機材料を用いたハイブリッド絶縁膜を組み合わせることで,2Vで駆動するセキュリティータグを開発した。

有機半導体を用いることで無機デバイスにはなかった分子の向きや表面形状などのばらつきも利用できるようになった。このセキュリティータグはリングオシレーターと呼ばれる発振回路を利用したもので,二つのリングオシレーターの発振周波数の大小を比較することで0か1の数値を生成する。

二つのリングオシレーターの設計が同じであればどちらの周波数が大きいかは製造時のばらつきによって決まるので,セキュリティータグ回路内に複数のリングオシレーターを作成すれば回路ごとにランダムで固有の数値を生成できる。

今回,セキュリティータグの一部に外付け装置を利用したが,これらは有機デバイスでも実現されており,将来的にリングオシレーター回路と同時に作製することができる。

今回,大気中で安定な半導体材料とハイブリッド絶縁膜を用いた。特にn型半導体に関しては,従来のフッ素系銅フタロシアニン(F16CuPc)が大気中では10日後に初期値の50%ほどの移動度に低下してしまうのに対して,今回用いたTU-1は212日後でも7%の低下に抑えられる。

これによりセキュリティータグ回路の安定性が向上し,駆動時のエラー率は10%以下であった。また,一般的な厚い高分子膜を用いたデバイスでは駆動電圧が40V程度であるが,自己組織化単分子膜とアルミ酸化膜を用いた6nmの極薄なハイブリット絶縁膜層を用いることで,駆動電圧を2Vまで低減できた。

これにより,消費電力を抑えられるため,今回開発したセキュリティータグ回路を,商品パッケージへの貼り付けや,紙幣や有価証券の偽造防止などに用いることが容易になった。

今後はデバイス作製プロセスに産総研の持つ印刷技術を組み合わせて,生産効率の向上を図ると共に,印刷プロセス特有のばらつきも利用して,より固有性の高いセキュリティータグの開発を進めていくという。

また,この有機セキュリティータグ技術を利用して安全安心な社会を実現するために,データベースや認証サーバーなどを含む信頼性の高い運用システムの開発などを行なっていくとしている。

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