DNP,箔押し加工できるリップマン型ホログラムを開発

大日本印刷(DNP)は,身分証や製品保証カードなどの高いセキュリティや高級感が求められるプラスチックカードに,さまざまな形状で箔押し(ホットスタンプ)加工できるリップマン型ホログラムを開発した(ニュースリリース)。

同社は,リップマン型ホログラム付きカードとして提供するほか,高いセキュリティが求められるカードを製造している海外メーカーなどに向けて,ホログラム箔として単独でも販売する。2016年4月に販売開始予定。

真贋判定等の高いセキュリティが求められるプラスチックカードの多くには,銀色をベースに見る角度により色が虹色に変化し,左右方向の立体感を表現できるエンボス型ホログラムが使用されている。しかし近年,精巧な偽造カードが作られるようになってきたため,より偽造が困難で目視で容易に真贋判定がしやすいリップマン型ホログラムのニーズが高まっていた。

リップマン型ホログラムは,奥行きのある立体感の表現に優れ,高い意匠性を有するとともに,極めて偽造が困難という強固なセキュリティ性能が世界的に評価され,模倣品対策としてブランド品のパッケージや保証書,クレジットカードなどに採用されている。

DNPは1992年にリップマン型ホログラムの製造を開始しているが,DNPの国内の工場で製造する必要があった。それに対して海外などから,現地で製造するカードにリップマン型ホログラムを使用したいという要望が多く寄せられたため,今回,箔押し機でカードに加工できるリップマン型ホログラムを開発した。

リップマン型ホログラムは,フィルムに塗布した感光性の特殊なポリマー材料の内部の密度を変化させ,屈折率の変化で干渉縞を形成することにより製造される。その干渉縞に入射する光の回折現象により,立体的なホログラム像が表示される。

リップマン型ホログラムの製造には高度な技術が必要であり,世界でもDNPを含む数社だけが製造できる。特にDNPは,世界で初めて量産に成功しただけでなく,デザイン表現でも優れた技術を有している。

DNPは今回,層の構成を工夫することで,プラスチックカードにさまざまな形状で箔押しできる薄さと加工適性を備えたリップマン型ホログラムを開発した。一般的な箔押し機でカードに転写加工できる。

リップマン型ホログラムは左右に加え上下の立体感も表現できるため,エンボスホログラムと比べて,より立体感のある画像を表示することができる。その立体感を確認することで,カードの真贋を目視で容易に判定できることから,カードのセキュリティ性が向上する。またその意匠性により,高級感を持たせることなどにも適している。

DNPは,身分証や製品保証カードを発行する企業にリップマン型ホログラム付きカードを提供するほか,ホログラム転写箔としてもカードメーカーへ提供し,2018年度までの3年間累計で5億円の売上を目指すとしている。