立命大,UHF帯によるドローンの無線給電に成功

立命館大学は,UHF帯(300MHz~3GHz)の電磁波を用い,小型・軽量の回転体に適した無線給電手法を開発した(ニュースリリース)。

近年,非接触の無線電力伝送が注目されている。電力伝送方式として,電動歯ブラシの充電等に用いられているトランス型の電磁誘導方式やHF帯(3MHz~30MHz)以下の磁気エネルギーを利用した磁気共鳴方式がある。

これらの方式は,コイル同士の磁場を結合させて電力伝送を行なうため,コイルは基本的に1対1の構成となり,低い伝送周波数で数十Wの大電力を伝送するためには,コイルを数十cm以上に大型化しなければならず,コイル自身が重量化する問題点があった。

さらにこれらの方式は,送電距離が一定の場合,電力伝送効率が優れているが,送電距離が可変になると電力伝送効率が極端に減少するという問題もあった。

研究グループでは今回,UHF帯(300MHz〜3GHz)の電磁波を用い,小型・軽量の回転体に適した無線給電手法を開発し,その有用性を電力伝送距離が変動するバッテリレス・マルチコプターの浮上実験で実証した。

今回採用したパッチアレイアンテナは,金属輻射板からなるパッチアンテナを複数個集積化し輻射エネルギーを上方に集約し,送電距離が送電電磁波の波長に比べて十分に長い遠方界で電力効率のよい伝送を行なうことができる。

加えて,送電距離が送電電磁波の波長の約1/6以下になる近傍界では,ダイポール受電アンテナに対して電力伝送モードが電磁界から静電結合に変化し,広い輻射面積を持つパッチアレイアンテナは,複数の受電アンテナに対して効率のよい電力伝送を行なえる利点を持っている。

実験に用いたマルチコプターの直径は24cmで重さは27g。45cm角の4パッチアレイ送信アンテナ上にマルチコプターを置き,アレイアンテナに30W,430MHzの高周波電力を供給したところ,各ロータは無線エネルギーを受電し,マルチコプターは約10cm浮上した。マルチコプターの浮上に6〜8Wの電力が必要となるため,この無線給電システムの電力伝送効率は20〜25%となる。

研究グループは今後,受信アンテナおよび整流回路での電力変換効率を高効率化させるとともに,マルチコプターの浮上距離の延伸,飛行制御といった高性能化に加え,電気自動車等で用いられている駆動モータとタイヤが一体化したインホイールモータへの無線給電等,マルチコプター以外の回転体への応用先とのマッチングを行なう。

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