キヤノン,質感情報をプリントで再現する技術を開発

キヤノンは,照明の方向や見る角度で変化する物体の光沢感,立体感,透明感などの「質感情報」をデジタルカメラで取得し,プリントで忠実に再現する質感画像処理技術を開発した(ニュースリリース)。

質感とは,光沢感,立体感,凹凸感,透明感など,その材質について人が感じ取る視覚的,触覚的な要素。写真や印刷物で質感を再現するには,色の情報に加え,物体表面の凹凸や光の反射特性などの質感情報を取得することが必要になる。

今回開発した質感画像処理技術は,デジタルカメラを複数台用いて対象物を撮影し,微細な凹凸や光沢などの質感情報を数値化する。そして,数値化した質感情報をプリンター(UV硬化型プリンター)の特性に応じて最適に制御し,オリジナルの質感を忠実に再現するもの。

この技術により,高精細な色彩表現だけでなく,金属や生地といった多様な質感のプリント表現を可能とした。また,オリジナルの質感を忠実に再現できることから,油彩画などの貴重な歴史的文化財を複製することで,優れた作品に直接触れることができる新しい鑑賞方法や,オリジナル作品を良好な環境で保存するといった活用も見込まれるとしている。

同社では,これまでの高精細な写真プリント技術に加え,壁紙などのインテリア素材や広告看板,商品パッケージなど適用先の拡大を目指し,今後さらにこの技術の開発を強化しするとしている。

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