東北大ら,二酸化チタンの欠陥を操る方法を開発

東北大学,理化学研究所,東京大学,千葉大学,英University College of Londonの研究グループは,二酸化チタン(TiO2)の機能を制御する欠陥を自在に操る新たな方法を構築した(ニュースリリース)。

TiO2は本多藤嶋効果などを示す非常に有名な光エネルギー変換材料であり,この成果から欠陥操作によって高性能な光触媒,太陽光発電などの革新的な機能が創成できると期待される。

TiO2は光触媒作用,光電気化学反応,太陽電池電極,光誘起超親水性など光を有効利用できることが広く知られている。また,光を利用しない場合においても,触媒,色材,半導体など様々な場面で利用されている。これらの機能には,TiO2の結晶構造を乱す原子欠陥の配列,量などが強く関わっている。

そのため,原子欠陥を操作することによって新たな機能が開拓できると考えられており,これまでは,加熱や光励起といった方法で粗く原子欠陥の量を変化させる方法が知られていた。

しかし,量や種類の精密な制御など,原子欠陥を自在に操作する方法はこれまで詳細が解明されておらず,欠陥操作による新規な機能の開拓は未だ達成されていない。

研究グループは,走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて,TiO2の代表的な原子欠陥である水素イオンを原子レベルで一つずつ直接観測し,STMの探針からの電場と電子の刺激を用いて単一の水素イオンを選択的に脱離させた。さらに,開発した新規な計算技術などによって,この反応機構を解明した。

その結果,この反応機構は,電場による水素イオン脱離の反応障壁の幅の減少と,電子からの励起とが協同することで,量子トンネル効果が誘発され水素イオンが脱離する,というものであることが分かった。

これは,これまでに見出されたことがない新しい化学反応であり世界で初めて明らかとなった反応機構。研究により,光エネルギー変換材料として最も重要なTiO2の原子欠陥を操作する新たな反応機構が明らかとなったことから,研究グループでは,光触媒,太陽電池などの性能を飛躍的に向上させるなど,太陽光の利用の可能性をさらに広げることが期待されるとしている。

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