富士フイルムら,1巻あたり220TBの磁気テープ技術を開発

富士フイルムはIBMと共同で,独自技術により記録密度を大幅に向上させた,「バリウムフェライト(BaFe)磁性体」採用の磁気テープの実走行試験を行ない,塗布型磁気テープにおいて世界最高の面記録密度123Gbpsiでのデータ記録・再生を実証した(ニュースリリース)。

これは,1巻あたりの記録容量が,従来比約88倍となる世界最大容量220TBデータカートリッジの実現を可能とする技術。昨年5月にIBMと共同で実証した面記録密度85.9Gbpsiを,BaFe磁性体の磁気特性を大幅に向上させることなどにより,さらなる高容量化につながる技術を確立した。今回の試験で用いた磁気テープは,同社の従来の塗布設備で生産しており,量産化が視野に入っている。

今回,同社は,独自の塗布型磁気テープ技術「NANOCUBIC技術」を進化させ,BaFe磁気テープの記録密度をより一層向上させた。微粒子BaFe磁性体のサイズのばらつきを抑制することで,高密度記録に重要な磁気特性のひとつであるSFDの低減に成功。また,新規の高分子分散剤の採用により,微粒子BaFe磁性体をより均一に分散させた。さらに,粒子配列をナノオーダーで緻密に制御することで垂直方向への配向度を向上し,広範囲の記録周波数領域で,より高品質な再生信号を実現した。

これに加え,新開発の非磁性層(下層)によってテープ表面の平滑性をより向上させ,ノイズ低減および磁気ヘッドと磁性層間の低スペーシング化による高い再生出力を実現した。テープの表面形状の精密な制御が,安定したテープ走行と高いトラック記録密度の達成にも寄与している。そして,独自技術によりサーボパターンを精密に配置した磁気テープと,IBMが開発した「新サーボ制御技術」や「信号処理技術」を組み合わせることで,123Gbpsiという面記録密度を実証した。

同社は,映像作品や企業の研究データなど長期保管が必要な貴重なデータを顧客から預かり,BaFe磁性体を採用したコンピュータ用磁気テープ「LTO Ultrium6 データカートリッジ」に記録して長期保管するデータアーカイブサービス「d:ternity」(ディターニティ)の提供を昨年開始している。