原研ら,103番元素「ローレンシウム」のイオン化エネルギーを測定

日本原子力研究開発機構(原研)の研究グループは,独マインツ大学,スイス欧州原子核研究機構の研究チーム等との国際共同研究において,103番元素「ローレンシウム(Lr)」のイオン化エネルギー測定に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

元素の周期表上で,原子番号100を超える非常に重い元素「超重元素」は,自然界に存在しないため核反応により人工的に作り出す。しかし,合成される割合が少なく,その寿命が数秒~数分程度であることから,1度に1個あるいは数個の原子しか扱えず,その化学的性質はほとんど明らかにされていない。この中で,103番元素ローレンシウムが,周期表上で「アクチノイド」と呼ばれる15の元素群の最後に位置することは理論上予測されていたが,実験的な裏付けはなされていなかった。

今回,研究グループは,原子力機構原子力科学研究所のタンデム加速器施設に設置したオンライン同位体分離器を改良し,その性能を向上させ,ローレンシウムのイオン化エネルギーの測定に世界で初めて成功した。その結果,ローレンシウムの原子核の周りを運動している最も外側の電子が,極めて緩く結合していることがわかった。

このことは,同じく周期表上で「ランタノイド」と呼ばれる15の元素群に見られる傾向と一致し,1940年代にノーベル化学賞受賞者のシーボルグ博士が提唱した,「アクチノイド」元素群が103番元素で終了するとの予測を,半世紀以上経てようやく実証したことになる。

これは理論によって推測された周期表のパズルが一つ解けたとも言える成果。このような最も重いアクチノイドであるローレンシウムを含む超重元素の化学的振る舞いに関する研究は,原子力に重要なウランを含むアクチノイド元素群の全体像を明らかにして行くと共に,他の元素との反応性といった化学的な性質のより深い理解に貢献するとしている。

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