OIST,大気中で作製の太陽電池フィルムが高光電変換効率を示すことを発見

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,大気中で作製された太陽電池フィルムが高い光電変換効率を示すことを発見した(ニュースリリース)。この研究成果は,太陽電池の製造コストの大幅な削減につながる可能性を秘めるものだという。

今回の研究で使ったのはペロブスカイト。これまでペロブスカイトの塗布膜を外気にさらすと,空気中の水分とペロブスカイトが反応を起こし,フィルムの経年劣化を引き起こすとされてきた。このため,ペロブスカイトを製造する際には,水分を除去した環境をつくりだすアニーリング(焼きなまし)処理が必要だとされてきた。

今回研究グループは,湿気がペロブスカイト形成に与える影響を調べようと,セ氏105から125度の温度下でアニーリング処理を45分間行なった。その結果,太陽電池により適したペロブスカイトの作製に成功した。その後,窒素環境下で形成されたフィルムと,湿気を帯びた空気中で形成されたフィルムを比較した。

その結果,水分を含んだ空気中で作製されたフィルムには,通常より大きな結晶粒が形成され,材料の性質に大きな改善が見られた。フィルムは時間をかけて形成されるため,結晶粒もより大きなものへと成長した。結晶粒が大きいと,フィルム上の結晶断面が連続的になり,フィルム表面を移動する電子の流れがスムーズになるため,大型の結晶粒は,ペロブスカイト太陽電池の効率化につながる。

今回の研究では,最高12.7%という高水準の光電変換効率が達成された。世界を見やると他でも高い変換効率の向上に成功しているが,同研究成果の強みは,空気中の水分を100万分の1レベルまで減少するための高価な環境制御機器を必要としないところにある。特別な環境を必要としないエア・アニーリング(空気なまし)処理には,コストがほとんどかからないという。

研究グループは,現在の12.7%という水準が変換効率の頭打ちというわけではなく,この先さらに大きな結晶粒が得られるかもしれないと期待している。

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