関西大のイオン液体リチウム二次電池,地球周回軌道上での充放電に成功

関西大学が開発した「イオン液体リチウム二次電池」が,地球周回軌道上での充放電試験にイオン液体電池として世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

このイオン液体リチウム二次電池は,容量約1Ah,最⼤電圧4.2Vの薄型電池であり,通常の電解液の代わりに「イオン液体」を用いることで揮発成分・引火成分を一切排除し,宇宙用電池で不可欠であった堅牢な外装が不要な,軽量で薄く,コンパクトな新型蓄電池となっている。

本年6月,世界で初めて地球周回軌道上で充放電などの運用実験を行なうことを目的に,東京大学が開発した人工衛星「ほどよし3号」に搭載され打ち上げられた。その後,8月にイオン液体電池として軌道上での充放電に世界で初めて成功し,10月には長時間の充放電試験にも成功した。

実験データからは,耐真空補強なし・長期宇宙滞在にもかかわらず,宇宙環境の影響による劣化がほとんど無いことが明らかになった。この結果は,この電池が柔軟な外装のみで宇宙空間に安定的に存在することが可能で,地上に温存した同型の電池と全く変わらない性能を持つという,重要な成果を示すもの。

現在,軌道上の滞在約6か月を順調に迎えており,同大の教授らが運営するベンチャー企業「アイ・エレクトロライト」が性能解析とさらなる開発を継続している。宇宙・航空などの極限環境でもコンパクトでありながら安全で信頼性の高い蓄電池として,さまざまな分野での適用が進むことが期待される。

関連記事「産総研ら,リチウムイオン電池が充放電する時の電子状態の観測に成功」「東北大ら,全固体リチウム―硫黄電池の開発に成功」「東大,リチウムイオン電池と同等以上の性能を実現する新物質を発見