東北大,磁性材料の特性を左右する欠陥構造を特定

東北大学の研究グループは,英国ヨーク大学と共同で,第一原理計算による構造探索と世界最先端の超高分解能走査透過型電子顕微鏡を駆使し,磁性材料である四酸化三鉄(Fe3O4)(黒錆)中の面状欠陥構造を,原子レベルで決定することに初めて成功した(ニュースリリース)。

研究グループは,結晶中の格子欠陥である転位や粒界・界面を対象にして,その構造解析や格子欠陥を制御した新機能材料の開発を試みてきた。近年の原子分解能走査透過電子顕微鏡法の技術革新と第一原理による大規模な理論計算を併用することによって,今回の成果に至った。

これまで,Fe3O4の面状欠陥構造は,物質全体の磁性を大幅に弱める要因であると予測されていたが,今回の研究によりその原子構造だけでなく欠陥が持つ磁気特性も解明することができた。

今後,この研究を起点にし,このような欠陥構造の形成を制御することで,磁性材料の特性向上や格子欠陥構造を活用したスピントロニクスデバイスの設計,新機能材料の研究開発につながることが期待されるという。

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