東北大学,アインシュタインとボーアの思考実験を分子レベルで実現

東北大学多元物質科学研究所・教授の上田潔氏,フランスのソレイユシンクロトロン放射光施設・研究員のCatalin Miron氏のグループ,スウェーデン王立工科大学・教授のFaris Gel’mukhanov氏らの合同チームは,アインシュタインとボーアの論争で思考実験として提案された2重スリット実験を,酸素分子の2個の酸素原子を2重スリットに置き換えることによって,初めて実現した(ニュースリリース)。

アインシュタインとボーアは, 20世紀前半,光や電子があわせ持つ波としての性質と粒子としての性質の2重性の解釈について,論争を繰り広げた。彼らが論争の際に用いた手法は思考実験である。

実際には実験を行なうことなく,理論的思考によって実験結果を演繹するものだった。彼らの思考実験は,当時,実現できないものばかりだったが,のちの研究者の想像力を大いに掻き立てることになった。現在も様々な実験的検証が行なわなれている。

今回,合同チームは,アインシュタインとボーアの論争でも主要な位置を占める2重スリット実験を分子レベルで実現した。そして,ボーアの反論を裏付けるように,一方のスリット(原子)だけが受ける電子の反跳運動量を観測した場合には干渉縞が消え,これが観測できない場合には干渉縞が現れることを初めて実証することに成功した。

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