京大,iPS細胞を使って筋ジストロフィーの原因遺伝子の修復に成功

京都大学の研究グループは,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者から作製したiPS細胞において,TALENやCRISPRといった遺伝子改変技術を用いて,病気の原因遺伝子であるジストロフィンを修復することに成功した(ニュースリリース)。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは,ジストロフィンという遺伝子に変異が生じ,筋肉の衰弱が進行していく疾患。患者から得たiPS細胞でジストロフィン遺伝子を修復することが,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの新たな遺伝子治療につながると期待できるが,30億塩基で構成される巨大なヒトゲノムの中で,ジストロフィン遺伝子というたった1カ所の変異だけを精密に修復するのは困難だった。

研究グループは,まずゲノム上の配列の中から,予期しない場所でDNA切断が起きないように,ゲノム全体で1カ所しかない配列のデータベースを作成し,その情報を元に遺伝子の切断部位を決めた。

ジストロフィンタンパク質の機能を取り戻すために,研究グループは3つの手法(Exon45 skipping,Reading frame shift,Exon44 knock-in)を患者由来のiPS細胞に用い,Exon44 knock-in法が最も効果的なアプローチであることを見出した。

更に核型解析,コピー数多型解析,エクソーム解析により,最も遺伝子変異の少ないクローンを選んだ。最後に選び出されたiPS細胞を骨格筋細胞へと分化させたところ,正常型のジストロフィンタンパク質を発現していることを確認した。

今後,この成果を治療に結びつけるためには,修復したiPS細胞由来の筋肉細胞をどのように移植するかなど課題も残っている。しかし研究グループは今後,将来のiPS細胞技術による遺伝子治療に向けて重要なフレームワークとなることが期待できるとしている。

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