富山大,光により薬の作用タンパク質を高効率で特定する技術を開発

富山大学の研究グループは,光化学反応を使ったアプローチにより,化学標識法による世界最速レベルのタンパク質識別法の開発に成功した(ニュースリリース)。

薬物等の生理活性分子がどのタンパク質に作用するかは,創薬・生命科学の重要課題の一つ。その解明には,相互作用の相手を直接捕捉する標識法が最も確実だが,複雑な生体分子の海で極微量の相手タンパク質を正確に見分ける必要があり,多くの手間と高度な技術が必要だった。

今回の研究で開発した高性能試薬は,光反応性,蛍光性,切断性,重水素標識,薬物導入部位などの多機能を,非常にシンプルな試薬構造中にうまく収める事により実現した。

これにより,ゲノムに制御され,特定の細胞・組織・器官で発現されるタンパク質であるプロテオーム中から薬物標的タンパク質を捕捉し,LC-MS/MS(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で混合物を分離し,質量分析装置(MS)で順次質量を測定するオンライン型分析装置)の解析ラインで,目的タンパク質のペプチド構造を蛍光性二重ピークとして正確に検出する。

この方法により解析効率が飛躍的に向上し,世界最高水準に到達した。創薬の主要対象である膜タンパク質の活性部位を知ることは難しく,目的外タンパク質との相互作用が薬の副作用の原因ともいわれており,薬の作用タンパク質群の確実な把握が重要となっている。今回の研究はこのようなタンパク質にも対応できる数少ない方法の1つ。研究グループは,化学標識法の効率化はこのような系の解析を飛躍的に短縮し,創薬の裾野を広げるとしている。

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