東大,最悪性脳腫瘍細胞が腫瘍をつくる仕組みを解明

東京大学の研究グループは,最悪性脳腫瘍「グリオブラストーマ」の検体を,がん幹細胞を維持した状態で培養し,そのDNAを解析した。その結果,1)脳腫瘍のDNAには,「5hmC」と呼ばれる目印が多く存在すること,2)5hmCが,脳腫瘍が腫瘍をつくるために必須であることを世界で初めて発見した(ニュースリリース)。

さらに,5hmCが大きなタンパク質「CHTOP-methylosome複合体」をDNAへと導くことで,細胞をがん化させる遺伝子を活性化していることを明らかにした。

ほとんどのがん細胞においてはDNAに異常がみられ,このことが細胞をがん化させる主な要因と考えられている。また,近年の研究により,がん細胞の集まりである腫瘍をつくる細胞は一様でなく,一部の「がん幹細胞」と呼ばれる細胞が腫瘍を形成する強い能力(造腫瘍能)を持っていることがわかってきた。

今回の結果は,5hmCや,5hmCをつくる仕組み,あるいはCHTOP-methylosome複合体が,脳腫瘍を治療する上で重要な標的となることを示唆している。

「グリオブラストーマ」脳の機能的部位に生じる腫瘍のうち約52%を占める。予後が悪く,一年後生存率は約50%程度に留まり,五年後生存率は7.8%と非常に低い。WHOによる脳腫瘍の分類では,最悪性とされるgrade IVに分類されている。

研究グループでは,今後この仕組みを標的とした薬剤が開発され,脳腫瘍の治療に貢献することが期待されるとしている。

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