東北大らが開発するデブリ防止のための再突入衛星,JAXAの実験に採用

9月26日,宇宙航空研究開発機構(JAXA)は国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から超小型衛星を放出するミッションに,5機の衛星を選定したことを発表した。その衛星の一つとして,東北大学と産業機械製造メーカ中島田鉄工所が共同開発する超小型人工衛星「FREEDOM(フリーダム)」が選定された(ニュースリリース)。

開発グループは,現在運用中の超小型地球観測衛星,「雷神 2」の軌道離脱手段として,膜展開式軌道離脱装置の開発に着手した。「雷神 2」はDOM1500と呼ばれる1.5m四方の薄膜を展開する機構を搭載し,現在は4.5m四方の薄膜を展開するDOM4500の研究開発を行なっている。

「FREEDOM」はCubeSatと呼ばれる規格に則っており,一辺の長さが約10cmの立方体で,質量が約1.3kgの超小型人工衛星。「FREEDOM」は「きぼう」から放出後に軌道上において1~1.5m四方の薄膜を展開し,宇宙空間にわずかに存在する空気抵抗を利用して軌道を離脱,地球大気圏への早期再突入の実証試験を試みる。

FREEDOMに搭載される膜展開式軌道離脱装置は,近年世界中で盛んに開発が進められている超小型人工衛星が運用終了後に軌道上でスペースデブリ(宇宙ゴミ)化することを防止するために,国連のスペースデブリ低減ガイドラインを基に開発グループが中心となって共同開発した。最終的には50kg級超小型人工衛星を高度約900kmから25年以内に軌道離脱させる性能の実現を目指している。

「FREEDOM」衛星は今後,技術調整・安全審査等の必要な手続きを経て,2016年4月~9月の間にISSに輸送され,「きぼう」から高度約400km,軌道傾斜角約51.6°の円軌道に投入される予定。

「FREEDOM」衛星が軌道上実証を目指す膜展開式軌道離脱装置は小型軽量化と同時にインタフェースの簡易化を追求しており,開発グループは,将来的には日本国内外の超小型人工衛星に幅広く利用されることを期待している。

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