原研ら,イッテルビウム化合物の電子が低温や磁場によって変化する現象を発見

日本原子力研究開発機構 (原研)は,フランス原子力庁グルノーブル研究所と共同で,重元素化合物YbRh2Si2の低温での特異な電子状態を初めて明らかにした(ニュースリリース)。

水を冷やすと凍って氷となるように,低温では物質のなかの電子は,言わば凍って色々な状態をとる。特定の物質が低温に冷やされた時に起こる超伝導現象もその一例。

今回の研究では,重元素と呼ばれる元素のうち,イッテルビウム(Yb)化合物の一つであるYbRh2Si2に注目し,核磁気共鳴法を用いて電子状態を観測した結果,低温で低磁場の環境下においては,水と氷が共存するように,二つの異なった電子状態が,まだら模様になって共存することを初めて見出した。

さらに,磁場を高くすると,水と共存していた氷が溶けるように,まだら模様から均一した電子状態に変わることも分かった。これらは,今までに観測されたことのない新しい現象の発見であり,重元素を含む化合物の物性研究において磁場による電子制御の新たな展開が期待されるもの。

研究グループは今回の研究成果について,磁場による電子回路の開閉など,重元素が有する幅広い電子機能性の解明や新しい原子力材料開発につながり,将来の原子力科学の発展に寄与すると期待している。

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