国際研究チーム,望遠鏡での光学観測により微細構造定数を確認

豪スウィンバーン工科大学を中心とする研究チームは,宇宙の基礎物理法則を調べるため,可視天体観測において世界最高レベルの性能を有する3つの地上大型望遠鏡を用いて,ひとつの天体を観測した(ニュースリリース)。

研究チームは,すばる望遠鏡に加え,同じくハワイにあるケック望遠鏡,そしてチリにある超大型望遠鏡(VLT)をすべて利用し,HS1549+1919と呼ばれるクエーサーの観測を集中的に行なった。

このクエーサーからやってくる光は,3つの銀河をくぐり抜けて地球に到達する間に,ある特定の波長が吸収されるため,特徴的な光の欠損パターンが残される。このパターンを調べることにより,遠方宇宙(すなわち過去の宇宙)における基礎的な物理法則を調べることができる。具体的には,電磁気力の大きさの指標となる微細構造定数を調べた。

観測が高精度で信頼できることを確認するために,上記3つの望遠鏡を使用した。その結果,3つの望遠鏡で取得されたデータはいずれも同じ結論を導き出した。それは,過去100億年の間に,微細構造定数の大きさが100万分の5~10程度以上のスケールでの変動は示さないというもの。

現在,研究チームは他の銀河に対しても同様な測定作業を進めており,この手法をより多くのクエーサーに対して適用すれことで,宇宙の長い歴史において,本当に微細構造定数が変動しているのか否かを,非常に高い精度で確認出来るようになるとしている。

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