情報通信総合研究所,増税のICT産業に対する影響が予想以上だったと分析

情報通信総合研究所は,情報通信(ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために,九州大学教授篠﨑彰彦氏,神奈川大学教授飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT 関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT 経済報告」として四半期ごとに公表しているが,2014年4-6月期分を公表した(ニュースリリース)。

それによると,2014年4‐6月期のICT経済は4四半期連続でプラス成長となったが,消費税増税の反動減などから増加幅は縮小し,前年同期比0.7%増となった。

消費税増税後その反動減による影響を見るために,前回5%への増税前後97年の動向と比較をしたところ,今回の消費税増税ではICT財,ICTサービスともにプラス成長は維持したものの増加幅は縮小した。特にICT財については,財全体および前回と比較しても今回の反動減がいかに大きいかが分かる。

前回は,ICT財はプラス成長でかつ増加幅を拡大,ICTサービスはプラス成長で増加幅は縮小した。ただし97年2月に固定電話料金の値下げが実施されており,ICTサービスの縮小はその影響によるもので実態は数字ほど縮小していなかったと推測できる。つまり今回の消費税増税による反動減の影響は,ICT 経済全体では前年同期比でプラスを維持したものの,前回と比較して,特にICT財を中心に大きく減速した格好となっている。

その背景を個別需要項目で確認すると,前回と今回の一番の違いはICT輸出。97年当時,ICT輸出は,国内輸出全体と同様,円高是正や欧米を中心とする堅調な海外景気に支えらえて好調であった。一方,今回のICT輸出はプラスを維持し,国内輸出全体の落ち込みより小さい。これは,アベノミクスである程度の円高是正がなされ,部材メーカが輸出先を多様化しリスク分散した結果。

しかし輸出の回復は期待されたほどではなく,力強さに欠け,数量ベースではここ2四半期連続でプラス転換したばかり。97年はICT消費やICT投資が消費税増税の影響で減速する中,ICT輸出がそれを支えたが,今回はそのICT輸出にICT経済を支えるほどの力強さがなかったということになる。

97年の時は大きく落ち込むことはなかったICT経済だが,来期以降については,ICT輸出は数量ベースで7月単月でもプラスを維持しており,今後もゆっくりであろうが回復していくとしている。また ICT消費はパソコンの買い替え需要が来季も続くかという点が一つの焦点となる。移動電話他の通信機器は,秋以降の新型スマートフォンの発売を控えて買い控えが出る可能性があり,ICT消費全般に回復力は強くないと予測している。

ICT 輸出に力強さが戻らない,ICT 消費も来期は回復力が弱い可能性が高いとすると,望みはICT 投資となる。ICT投資は対前年同期比マイナス5.8%と今期大きく減少になった。しかも電子計算機,通信機,半導体製造装置の3品目すべてでマイナスに落ち込むのは19四半期ぶりのこと。

ICT経済では投資については機械受注統計を見ているが,その機械受注統計は短期的なフレが大きいため,幅をもって解釈する必要がある。今回も月次でみると,4月に9.3%増となった後,5月は16.7%減,6月9.5%減と2か月連続でマイナスとなっている。

企業業績は回復基調にあり,今年度の設備投資計画も増加が見込まれているが,7-9月期の動きがどうなるか注意深く観察する必要があるとしている。

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