原研ら,無人ヘリに搭載可能な放射性セシウムを可視化するガンマカメラを開発

日本原子力研究開発機構(原研)は,古河機械金属,, 東京大学,東北大学と共同で,「無人ヘリ搭載用散乱エネルギー認識型高位置分解能ガンマカメラ」の開発に成功した(ニュースリリース)。

福島第一原子力発電所事故後に行われている放射線モニタリングでは,人間や車が立ち入ることの困難な場所については計測が難しいため,無人ヘリや有人ヘリによる上空からの放射線量測定が行なわれている。しかし,位置分解能が数十~数百mと大きく,より高位置分解能かつ高精度の線量マップに対する要望があった。

開発した散乱エネルギー認識型ガンマカメラは,既存の材料から選定した有効原子番号の小さいシンチレータからなる第1面検出器(散乱体)でコンプトン散乱を起こさせて散乱位置と反跳電子のエネルギーを測定し,高感度のGAGG(密度6.63g/cm3,有効原子番号54)シンチレータとAPDアレイからなる第2面検出器(吸収体)で散乱ガンマ線の位置とエネルギーを測定する。

従来のコンプトンカメラ方式では,両方の検出器において高いエネルギー分解能が求められていたが,標的となる線源のエネルギーが既知の場合には,幾何学的な配置から前方で散乱されるエネルギーと後方で検出される位置の関係を算出することで,後方の検出器の詳細なエネルギー情報を必要としないエネルギー補正方式を導入したシステムを新たに考案し,格段の角度分解能と検出効率の向上にブレイクスルーを果たした。このガンマカメラは,標的となる線源は放射性セシウムに限定されるため,新しいコンプトンカメラ方式の有効性を最大限に発揮できる。

また,Ce:GAGGは高発光量・高エネルギー分解能,高い検出効率及び自己放射能が無い点からCe:GAGG結晶を用いれば,それまでの材料を利用するのに比べて高感度な検出器を実現できる。GAGGのエネルギー分解能は半導体検出器にはやや劣るものの,662keV付近の134Cs(605keV)と137Cs(662keV)のガンマ線が分離できる。

エネルギー補正方式により吸収体でそれほど高いエネルギー分解能を必要しないこのシステムには,上記のガンマ線の分離が可能な分解能を有するシンチレータの中で,感度の点でも最適。試作機においては,第2面検出器として,10x10x10mm3のエネルギー分解能を改善した結晶を4×4ピクセルに配置したシンチレータアレイと1対1対応する4×4 APDアレイを組み立て,40x40mm2の検出面積を持たせた。

高感度シンチレータを10mmの厚さにすることで,高感度な検出器が実現できる。GAGGはまた発光波長が520nmと長くAPDの波長感度領域と一致するため,APDとの組み合わせで性能を最大限発揮することが出来る。APDは光電子増倍管に比べ非常に小型軽量であり,動作電圧が小さく消費電力が小さいことから,電圧供給装置やバッテリーの軽量化が可能。結果として,無人ヘリに搭載可能な小型で軽量(10kg以下)のガンマカメラを実現できた。

今回のガンマカメラの開発により、山林などを含む広範囲の放射性セシウムの分布の可視化,及び,周辺からの影響が排除された可視的かつ高精度の放射線量マップの作成が可能となり,広範囲中の除染箇所の特定や除染効果の確認作業の効率化に向けて大きく前進する。

研究グループは今後,検出素子を増やすことによって感度と位置分解能の向上を実現し,現地での試験結果をフィードバックして改良していく。さらに,計測回路の高集積化,検出素子の高精細化を図ることにより,指向性と検出効率を高め,位置分解能1m以内の高精度・高位置分解能の放射線量分布測定法の実用化を目指すとしている。

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