静岡大ら,ガラクト脂質が光合成膜に必須ではないことを証明

静岡大学,東京大学,東京工業大学の研究グループは,光合成反応を行なう生体膜である光合成膜に普遍的に存在するガラクト脂質が,これまでの常識と異なり光合成に必須ではないことを明らかにした(ニュースリリース)。

植物や藻類,シアノバクテリアなどの酸素発生型光合成をする生物では,光合成反応の場である光合成膜は,ガラクト脂質注でできている。植物では脂質の骨格に糖の一種であるガラクトースを転移してガラクト脂質を合成するのに対し,シアノバクテリアでは脂質の骨格に一度グルコースを転移した後,ガラクトースに変換して合成することが知られている。

研究グループは,これまで不明であったグルコースからガラクトースに変換する酵素の遺伝子mgdEを明らかにし,その遺伝子破壊株を作成した。遺伝子破壊株では,ガラクト脂質の代わりにグルコースを持つ脂質が蓄積していたが,光合成膜が形成され,光合成活性も維持していることがわかった。このことは,ガラクト脂質が光合成膜に必須ではないことを示している。

今回の発見は,ガラクト脂質が光合成に必須であるという,これまでの常識を覆す結果であり,光合成膜の機能解明に大きな進展をもたらす成果。研究グループは今後,光合成に必須のタンパク質群の構造や安定性に膜脂質が与える影響を明らかにすることで,光合成システムの精密な理解を促進し,エネルギー物質生産の効率化に役立つことが期待されるとしている。

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