理研,発がんに関わるマイクロRNAが分解される仕組みを解明

理化学研究所(理研),蘭アムステルダム自由大学らの研究グループは,がん細胞などの増殖を促進するとされるマイクロRNA(miRNA)の1つ「miR-21」が分解される仕組みを解明し,多くのがん細胞で,分解する仕組みの異常によってmiR-21が蓄積していることを突き止めた(ニュースリリース)。

DNAから転写されたRNAには,タンパク質合成の遺伝情報を含まないノンコーディングRNA(ncRNA)が大量に存在する。ncRNAの中でも,miRNA と呼ばれる非常に短い1本鎖RNAは遺伝子の働きを抑制する機能を持ち,がんなどの疾患との関連が注目されている。miRNAは長さが18~24塩基程度であり,末端の1または2塩基が異なる多型がしばしば見られる。しかし,なぜmiRNAにこのような多型が存在するのか,その理由は明らかにされていなかった。

研究グループは,miRNAの1つmiR-21に,長さが異なる多型が存在することを発見した。miR-21はがん抑制遺伝子を標的とし,その機能を阻害することでがん細胞の増殖を促進すると考えられている。詳細な解析の結果,miR-21の長さの違いは3’末端にアデニンが付加(アデニル化)されたためであり,さらに,アデニル化されたmiR-21は核酸分解酵素による分解が促進されることが判明した。

多くのがん細胞でmiR-21が大量に発現しているが,これは,“アデニル化したmiR-21を分解する仕組み”がうまく機能せず,分解と安定化のバランスが崩れてmiR-21が異常に蓄積したためと考えられる。

今回,miR-21の分解の仕組みとがん細胞における異常な蓄積の関連が判明したことにより,今後,miRNAの安定化と,がんを含むさまざまな疾患の発症との関連についても解明が進むと期待できるとしている。

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