京大,タンパク質分解装置の活性低下が細胞死に繋がる過程とその抑制法を発見

京都大学の研究グループは,細胞内のタンパク質分解装置であるプロテアソームの活性低下が細胞死を引き起こすメカニズムの解明に成功した(ニュースリリース)。今後,老化に伴う神経変成疾患の予防という観点から,ミトコンドリアの機能障害を抑制するあるいは予め予防する食品成分(レスベラトロール・セサミン)や医薬品の摂取が効果的になることが期待される。

細胞内のタンパク質は,正しく折りたたまれてはじめて機能を発揮する。一方で誤った折りたたみをしたものや,古くなったりすることで異常な構造をとるものは,細胞内のタンパク質分解装置であるプロテアソームで分解されるが,老化に伴いプロテアソームの活性が低下することが知られている。

そのために異常な構造を持ったタンパク質が蓄積することで細胞死を引き起こし,アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の原因となる。しかしながら,プロテアソームの活性低下が細胞死を引き起こすメカニズムは明らかになっていなかった。

研究グループは以前開発した,細胞内の酸化還元状態を可視化できる蛍光プローブRedoxfluorを用い,老化のモデルとしてのプロテアソーム活性を阻害した条件で細胞内の酸化還元状態を計測したところ,細胞内に酸化ストレスが生じ,やがて細胞死に至ることがわかった。

一方,プロテアソーム阻害条件下で食品由来の抗酸化剤でポリフェノールの一種であるレスベラトロールを細胞に添加したところ,細胞内の酸化ストレスを抑制したうえで,細胞生存率を回復させた。

さらにレスベラトロールは,細胞内において活性酸素を発生する主要な細胞内小器官であるミトコンドリアの障害を防ぎ,その活性酸素産生を抑制していた。また,プロテアソーム阻害条件下でミトコンドリアの酸化還元状態を計時的に調べたところ,細胞全体よりも先に酸化されることがわかった。

したがって,プロテアソーム阻害条件下では,まずミトコンドリアの機能障害が生じ,それに伴い生じる活性酸素が細胞に酸化ストレスを引き起こし,細胞死に至ることがわかった。また,レスベラトロールやセサミンのような抗酸化剤の添加は,ミトコンドリアの機能障害を抑制することでプロテアソーム阻害に伴う細胞死を抑制できることがわかった。

今回,このような抗酸化剤の作用と細胞死の関係とそのメカニズムについて,細胞レベル,しかも微細な細胞内小器官レベルで可視化することにより解明することができたとしている。

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