産総研ら,納豆菌の力で合成界面活性剤の使用量を1/100に低減することに成功

産業技術総合研究所(産総研)はカネカと共同で,納豆菌が作り出す環状ペプチド(サーファクチン)によって,合成界面活性剤の使用量を100分の1程度にまで低減できることを発見した(ニュースリリース)。

炭素社会への意識が高まる中,環境中への拡散が懸念される合成界面活性剤の使用量の低減や,石油由来からバイオ由来の界面活性剤への転換が求められている。今回,納豆菌を用いて量産できるサーファクチンの特性を詳しく調べたところ,かさ高い環状ペプチドの作用で,合成界面活性剤の働きが大きく増強されることがわかった。

カネカが量産に成功したサーファクチンは,アミノ酸が環状につながったペプチドであり,環境や生体に対して低負荷であるだけでなく,合成界面活性剤(直鎖状)と大きく違い,特異な機能を発揮すると予想されていた。

産総研では,まず,サーファクチンの水溶液中での集合特性を評価した。一般に,界面活性剤は,水の表面に規則的に並んで飽和に達すると,水溶液中に移行し,ミセルと呼ばれる集合体を形成することで洗浄力を発揮する。従って,ミセルを形成する濃度(ミセル形成濃度)が低いほど,界面活性剤の使用量を低減させることができる。

今回の研究で,サーファクチンは,合成界面活性剤に比べて,分子1個のサイズが3~5倍程度も大きいことに加えて,水の表面に並びやすいことが分かった。そのため,サーファクチンと合成界面活性剤を併用した場合,水の表面がサーファクチンで優先的に覆われて飽和するため,ミセル形成が促進され,合成界面活性剤のミセル形成濃度を大きく低減できることが予想された。

実際に,微量のサーファクチンを,洗剤の主成分である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムに添加して界面活性効果を調べた結果,合成界面活性剤に対して,サーファクチンを1%添加すると,ミセル形成濃度は10分の1となり,合成界面活性剤の使用量をもとの濃度から10分の1に減らしても,同等以上の界面活性効果(表面張力低下能)が維持されていた。

また,合成界面活性剤にサーファクチンを10%添加した場合では,合成界面活性剤の使用量を100分の1に減らしても,同等以上の界面活性効果が見られた。今回発見した効果を活用すれば,洗剤やシャンプーなどの日用品や,広範な化学製品で利用されている合成界面活性剤の使用量を大幅に低減できると期待されるという。

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