岡山大,非アルコール性脂肪性肝炎にカルニチンが有効なことを発見

岡山大学の研究グループは,近年増加している非アルコール性脂肪性肝炎に対して,ミトコンドリア機能改善作用を有する「カルニチン」が有用であることを明らかにした(ニュースリリース)。

現在,非アルコール性脂肪性肝炎に対しては,抗酸化剤ビタミンEが世界的に標準的治療として使用されている。しかし,この薬剤は動脈硬化性疾患などに対する臨床研究において,生命予後がむしろ良くない可能性が指摘されていた。そのため,これに代わる新たな治療法の開発が世界的に急務となっていた。

今回,研究グループは,このカルニチンを用いた結果,脂肪性肝炎を経て肝癌に至る動物モデルにおいて、肝炎のみならず肝発癌に至る経過をカルニチンが改善する可能性を明らかにした。

これは,病気を進展させる過剰な酸化ストレスを抑制しつつ,生体にとって必要な酸化ストレスは維持しなければ最終的な生命予後延長に結びつかない可能性があるということを示すもの。抗酸化ストレス剤より,ミトコンドリア機能補助剤であるカルニチンがこのようなコントロールに有用である可能性が示された。

カルニチンはミトコンドリア機能補助剤であり,単純な抗酸化剤とは異なる作用機序を持つとされているため,酸化ストレスの適切なコントロールが可能な薬剤となる可能性がある。

今回の研究成果は,非アルコール性脂肪性肝炎の臨床現場のニーズに応えたものであり,今後,カルニチンが肝炎だけではなく,その先の肝癌まで見据えた新たな治療法開発の可能性を有するものとして期待されるとしている。

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