北里大ら,リンパ球の細胞接着の制御機構を解明

北里大学と関西医科大学は共同で,免疫細胞の1つであるリンパ球が細胞内の小胞輸送を制御する分子Rab13によって,接着や移動を制御する機構を明らかにした(ニュースリリース)。

リンパ球は,病原体など体内に侵入した異物を攻撃して排除する役割を担っている。この過程で,リンパ球と血管内皮細胞(血管の内側を構成する細胞)や細網繊維芽細胞などの組織を支持する細胞,あるいは,樹状細胞などの抗原提示細胞との接着が厳密に制御されていることが免疫監視機構にとって重要となる。

例えば,リンパ球は血流に乗って全身を移動しているが,リンパ節を巡回したり,感染部位へ移動する際には,血管内皮に接着し停止する必要がある。リンパ節内では,細網繊維芽細胞に接着しそれを足場に移動しながら抗原探索を行ない,特異抗原を提示する樹状細胞に出会い,接着することで異物の情報を受け取ることができる。

このように,リンパ球が細胞に速やかに接着するためには,LFA-1という接着因子がその接着性を変化させる能力が必要。今回,研究グループはRab13がLFA-1の細胞内における輸送を促すことによって速やかにリンパ球の接着能力を上昇させることを明らかにした。

この成果は,リンパ球の細胞接着を制御するメカニズムを分子レベルで詳細に明らかにしたものであり,免疫難病の発症機構の解明,あるいは,免疫反応を促進したり,過剰な免疫反応を抑制したりする治療法の開発につながるとしている。

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