大阪大ら,先天性の肝臓障害による「かゆみ」を改善する薬剤を発見

大阪大学と東京大学らの共同研究グループは,尿素サイクル異常症の治療薬であるフェニルブチレートが,うまれつきの肝臓の病気である「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症」を原因としたかゆみを改善させる効果があることを,世界で初めて発見した(ニュースリリース)。

患者の数が極めて少ない病気(希少疾患)の1つに,進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(Progressive familial intrahepatic cholestasis; PFIC)と呼ばれる,うまれつきの肝臓の病気がある。この病気は,遺伝子の異常が原因となり,原因となる遺伝子の違いにより,1型,2型,3型に分類される。

共同研究グループは,黄疸によるかゆみが特に強いことで知られる1型の子供たち3人にフェニルブチレートを投与し,速やかにかゆみが消失することを確認した。子供がかゆみのためにひっかいてできた傷は,投与後しばらくして無くなり,きれいな皮膚が再生してくることも確認できた。

また,子供たちは夜間に熟睡することができるようになり,子供だけではなく一緒に夜間の睡眠ができなかった家族の生活の質も向上することがわかった。一方で肝臓の働きを示す血液検査の値や肝臓の組織の様子は変化がなく,またフェニルブチレートの投与をやめることによりかゆみが再び元の強さまで戻った。

今までこの病気をはじめとして肝臓の病気を原因としたかゆみに対する有効な治療法は無く,子供たちの生活の質を低下させる主な要因になっていた。この治療法の発見により,この病気の子供たちをかゆみという悩みから救い出すことだけではなく,他の肝臓の病気によるかゆみに対する効果も期待できる。