東工大,導電性ナノファイバを利用したフレキシブルな透明導電フィルムを開発

東京工業大学の研究グループは,簡便かつ安価な製造法で得られるフレキシブルで割れない透明導電フィルムを開発した(ニュースリリース)。透明導電フィルムに利用されている酸化インジウムスズ(ITO)はコストが高く供給量に限界があり,脆弱で曲げ耐性もないため,代替物材料が強く求められている。

研究グループは,エレクトロスピニング法によって作製される髪の毛の100分の1~1000分の1の細さを持つ繊維「ナノファイバ」をマスクとして,金属蒸着フィルムをエッチング処理する,超薄型,軽量,フレキシブルで割れない透明導電フィルムの作製方法を確立した。

これまでにITOと同等の高い可視光透過率(80%)と高い導電性(45Ω/sq=表面抵抗率)を示す高分子フィルムの作製に成功している。このフィルムの表面には,アルミニウムナノファイバからなる導電性ネットワークが形成されており,ナノファイバーとフィルムの密着性も良好。

フィルムの光透過率と導電性はファイバー径とネットワーク構造の制御によってカスタマイズすることができる。導電材料としてアルミニウムを用いることで既存のITO代替技術より低コストで透明電極フィルムを作製できることも大きな強みとなっている。また,アルミニウム以外の金属の利用も可能。

開発した透明導電フィルムは,ITO代替材料としてデバイスの低コスト化に寄与するだけでなく,将来的にはフレキシブルデバイスを含む携帯から大型パネルに至るまで各種電子デバイスへの応用が期待できる。具体的には,薄型テレビ,インタラクティブタッチパネル,スマートフォン,タブレット端末,太陽電池,エレクトロルミネッセンス素子,電磁シールド,機能性ガラスなどが有望な用途だとしている。

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