九大,がんなどの簡易診断を目指し味覚・嗅覚センサ研究開発センターを拡充

九州大学味覚・嗅覚センサ研究開発センターは,7月1日付けで,新たに「応用医療センシング部門」を設置した(ニュースリリース)。昨年11月1日に設置された同センターは,味覚と嗅覚に関する基礎研究からセンサ開発,社会実装までを領域横断的に行なう世界初の研究開発拠点として,「味覚センサ部門」,「嗅覚センサ部門」,「感覚生理学部門」の3つの部門で構成していたが,今回の拡充で,癌やストレスの家庭内での簡易迅速な診断を可能とするセンサ開発を行なうなど,ライフイノベーションへの貢献を目指す。

世界,特に日本の少子高齢化社会にあっては,小児や高齢者が日々の生活を安全・安心・快適に送れる最適の医療を実現する必要がある。そのために,今回,尿や口臭,体臭検知で行なう医療・健康管理に関する研究を目的とした「応用医療センシング部門」を新設した。

応用医療センシング部門は,線虫C.elegansを利用し,匂いと受容体の対応関係を解明することで,癌などの疾病を早期に発見するセンサの開発ならびに基礎診断技術開発と臨床評価を行なう。線虫は,人間と同じ形態の嗅覚受容体を1200種以上(犬と同等)有し,匂いを感じる仕組みも哺乳類とほぼ同じで,嗅覚研究のモデル生物であると考えられている。

同部門は,理学研究院,医学研究院,農学研究院,九州大学病院にて癌検知に係る研究を行なっている研究者から構成され,既存部門と連携して,癌やストレスの家庭内での簡易迅速な診断を可能とするセンサ開発を行なう,同センターの拡充は,世界最高水準の学術研究の推進と,その成果の社会への還元,ならびに学際的な研究の推進を可能とする。

同センターは,基礎研究と応用研究を行なうことで,おいしさを可視化する五感融合バイオセンサの開発,機能性食品や苦くない薬の開発,超高感度匂いセンサの開発,匂いの可視化,そして今回新設された部門を中心として,癌やストレスを簡易迅速に検知するセンサの開発,癌診断技術の基礎技術開発と臨床評価を行なう。今後,家庭内で簡単に尿を検査し,検体を最寄りの検査機関に送付することで結果が数日で届く安全・安心・快適な社会の実現を目指し,複数の民間企業と連携しながら5年後の実現を目指す。