岡山大ら,突然変異マウスを用いて不妊の原因遺伝子を解明

岡山大学と米国のジャクソン研究所の国際共同研究グループは,変異原性物質により誘発された突然変異により精子や卵などの生殖細胞の分化に異常を呈するミュータントマウスを用いて,生殖細胞の発生,分化や配偶子(精子および卵)の形成に不可欠な新たな遺伝子を同定し,これらの遺伝子の機能が失われると不妊となることを明らかにした(ニュースリリース)。

研究グループは,ジャクソン研究所により作出された,ENUという変異性薬剤の投与により引き起こされた遺伝子の突然変異により,精子形成不全や生殖細胞の欠損により不妊となった突然変異マウスマウスの解析から,これらのマウスの不妊の原因が,Rev7遺伝子やTdrd12遺伝子といった細胞のDNAを損傷から守る働きのある遺伝子に生じた突然変異であることを明らかにした。また,これら以外にも,Tmem48という細胞の核膜を構成するタンパク質の遺伝子等のいくつかの遺伝子も,正常な精子や卵の形成に不可欠であることを明らかにしている。

このような生殖機能に異常を呈する突然変異マウスを用いることで,不妊の原因となる遺伝子を効率的に同定できることを示しており,研究グループは,今後もこれらのマウスを用いて不妊に関わる新たな遺伝子を同定するとしている。

現在,人間の不妊症だけでなく,家畜では繁殖障害の発生率は近年大きく上昇し,産業上の大きな問題となっている。これらの生殖機能の異常の多くは,配偶子や生殖細胞の発生分化の異常に起因していることから,今回の成果は,これらの不妊症や繁殖障害の原因を解明し,治療法を確立することにも大きく貢献することが期待される。

また,現在全国で深刻化している野生動物による農林業への被害に対処するためには,動物の繁殖制御法の確立にも不可欠となっているが,この分野への貢献も期待される。さらに生命の連続性を維持する上で最も重要な細胞である生殖細胞の発生と,分化に関わる分子機構を解明するという,生命科学における重要な課題にも大きく貢献するとしている。