NEDO,世界市場の獲得を狙う医療機器システム開発プロジェクトに着手

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,ロボティクス,IT,画像処理など国際競争力のある技術を応用した革新的医療機器システム開発プロジェクトに着手する(ニュースリリース)。

このプロジェクトで開発する医療機器システムは,①これまでよりも多くの部位において内視鏡手術が可能となる軟性内視鏡手術システム,②脳組織損傷によって麻痺した運動や知覚の回復を可能にするニューロリハビリシステム,③この2システムを含む多様な医療機器の設定・使用を一元的に管理することが可能なスマート治療室――の3点。

①の軟性内視鏡手術システムのプロジェクトは,日本が得意とする軟性内視鏡とロボティックスの融合により,医師が手術野を俯瞰しながら直観的に操作可能な新しい軟性内視鏡手術システムを開発するもの。硬性内視鏡手術ロボットは,膵臓癌など硬性内視鏡での手術が難しい部分が多い。一方,これまで消化器内視鏡の延長線上で開発された軟性内視鏡手術システムは,鉗子の操作に極めて高度な技量を要し普及していない。

今回開発する技術は,〔1〕手術中にリアルタイムで重要な器官を確認するためのセンシング技術,かつ,広い視野を高精度に捉える手術用内視鏡(内視鏡の眼),〔2〕眼と独立に動き,広い動作範囲と高い把持力で多様な手術方法に対応できるロボット鉗子(内視鏡の手),および〔3〕ロボット鉗子の直観的な操作を可能とするコンソールセット。

②のニューロリハビリシステムとは,脳組織損傷により運動信号発信ができなくなった脳に可塑性を誘導することで,麻痺した運動や知覚の回復を可能にする医療機器。脳卒中は,2013年の国内患者数が280万人で,世界的には約3,600万人であり,社会的,経済的インパクトの極めて大きな疾患だが,脳卒中による重度麻痺は従来回復方法は無いのが現状。

また,治療室では様々な診断/治療機器が使用され,これらの操作・表示方法は統一されていない。さらに,医療機器の準備・設定ミスに起因する事故は医療事故全体の約1/4を占める状況にあると言われている。③のスマート治療室プロジェクトでは,こうした問題を解消し,安全性の向上および医療効率向上の礎とするため,多様な医療機器の設定・使用を一元的に管理する情報処理基盤を備えた治療室を開発する。このスマート治療室には,①の軟性内視鏡手術システムや②のニューロリハビリシステムもつながっていくことになる。

こうした医療現場の治療体系に必要な医療機器群を,3つのシステムが連携するパッケージとして開発,提供することで,個別の医療機器開発では得られない相乗効果と高い国際競争力が得られることが期待される。それぞれのプロジェクトテーマに関する委託予定先は以下の通り。

<軟性内視鏡手術システム>慶應義塾大学,川崎重工業,トップ,高知大学,パナソニックAVCネットワークス社,パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社

<ニューロリハビリシステム>慶應義塾大学,パナソニックエコソリューションズ社,島津製作所,日本光電工業,パシフィックサプライ,ソリトンシステムズ,インターリハ,札幌医科大学

<スマート治療室>東京女子医科大学,広島大学,信州大学,東北大学,デンソー,ミズホ,パイオニア,日立メディコ,日本光電工業,セントラルユニ,東芝メディカルシステムズ,エア・ウォーター,日立製作所