産総研,常温大気中で金属同士を接合する技術を開発

産業技術総合研究所(産総研)は,超平滑表面を持つ犠牲層薄膜上にメッキによりパターンを形成した後,犠牲層薄膜を除去して,超平滑メッキ表面を形成する技術を開発した。これをデバイスパッケージングのための接合技術に適用し,常温の大気中で金属同士の高強度接合を実現した(ニュースリリース)。

MEMSのパッケージングには,厚膜金属メッキにより形成された封止枠やバンプ電極による,金属同士の接合が用いられている。しかし,厚膜メッキ表面は表面粗さが大きいため,接合においては300 ℃以上の高温でプレスして金属を変形させることにより,接合面での密着を得る必要があった。一方,MEMSにはさまざまな材料でできた微細で繊細な機械可動部があるため,加熱加圧によるデバイスへのダメージが懸念され,低加圧・低温でのパッケージングが求められている。

今回開発したプロセスでは,まず超平滑に研磨されたシリコンウエハなどの仮基板上に,薄い犠牲層膜を成膜し,その上に厚膜金メッキパターンを形成する。次にこの金メッキパターンと封止基板上の金薄膜とを熱圧着法により接合する。その後,薬液に浸して犠牲層だけを選択的に溶解すると,封止基板には,表面が超平滑な金メッキパターンが転写される。

この超平滑メッキ表面とMEMS基板上の金属薄膜を常温大気中で接合する。ここで,仮基板上の犠牲層薄膜およびMEMS基板上の金属薄膜は,スパッタ成膜により形成されており非常に薄いため,平滑な表面を維持している。また,熱圧着や常温大気中での接合の直前にアルゴンRFプラズマによる金属表面の活性化処理を行なっている。

このプロセスにより,常温の大気中で強固な接合を形成することができる。従来の接合プロセスでは真空環境や加熱機構を備えた大規模な接合装置が必要であったが,今回開発した接合技術は常温の大気中で接合できるため,装置の大幅な簡略化と製造効率の向上が期待できる。

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