生理研,心臓ポンプの「遅い」開閉を制御するイオンチャネルの分子メカニズムを解明

自然科学研究機構生理学研究所は、心臓の動きをつかさどるイオンチャンネルであるKCNQ1/KCNE1チャネルについて,これらが持つ開きにくく閉じにくい性質が,KCNQ1上に存在する二つのフェニルアラニン残基によってもたらされていることを発見した(ニュースリリース)。

心臓をポンプとして動かすためには細胞の電気活動が必須であり,その電気活動はイオンチャネルと呼ばれる膜タンパク質が担っている。イオンチャネルには複数の種類があり,それぞれのタイミングで開閉することで心臓を規則正しく収縮させている。

その中の一つであるKCNQ1は,KCNE1と呼ばれる膜タンパク質とともに働くことで,他のイオンチャネルと比べ非常にゆっくりと開閉することが知られている。このイオンチャネルの機能が損なわれると不整脈などの疾患を引き起こすことから,この開きにくく閉じにくい性質がヒトの心臓機能には不可欠となっている。

この「遅い」性質を作りだすために,これまでKCNE1の結合がKCNQ1チャネルを開きにくくしていることはわかっていたが,その分子機構の理解は十分ではなかった。今回研究グループは,フェニルアラニン残基は比較的大きなアミノ酸であり,二つのフェニルアラニン残基が互いに干渉し,KCNQ1/KCNE1チャネルを開きにくくすることを突き止めた。

今回の研究結果により,KCNQ1/KCNE1チャネルの動作原理の理解が深まることで,QT延長症候群などの心疾患に対する薬剤開発にも貢献すると期待される。