理研, 超薄板ガラスを利用したマイクロ流体チップ内電動ポンプを開発

理化学研究所(理研)は,超薄板ガラスの柔軟性を利用したガラス製マイクロ流体チップ内電動ポンプを開発した(プレスリリース)。

ガラス製の「マイクロ流体チップ」は,数cm角のガラス基板上に幅・深さ1 mm以下の流路を形成し,化学・生化学のプロセスを集積化したもの。ほとんどの溶媒・溶質に対して安定なため,医療診断向けの小型・高速反応の次世代型バイオデバイスとして期待されている。しかしガラスは硬いため,その中に流体を制御するバルブやポンプをガラスで作製して組み込むことはできず,流路をマイクロレベルで集積できるメリットが十分に生かせなかった。

一方,ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの樹脂で作製されたマイクロチップは,柔軟でありバルブやポンプの組み込みが容易だが,有機溶媒や気体と反応しやすいという難点があり,高度な表面化学処理が必要な細胞のパターニングなどには物理的安定性,化学的安定性の面で不向きだった。

理研は2013年,超薄板ガラスでバルブを作製し,全てがガラス製のマイクロ流体チップを実現した。超薄板ガラスは,厚さが10 μm以下と極めて薄いため,ガラスにも関わらず柔軟性が高く,割れにくいという特徴を持っている。

今回,ガラスバルブを4つ直列に並べて,コンピュータ制御のアクチュエータを使ってピンを高速で動かし,チップ内の液体を絞り出すように駆動するペリスタルティックポンプ形式のマイクロ流体チップ内電動ポンプを開発した。実証実験の結果,ガラスポンプはさまざまな溶液に対して安定に機能した。また,流量はアクチュエータの周波数に比例し,最大で毎分0.80マイクロリットル(μℓ)だった。これは分析や細胞培養などによく使われる流量の範囲にある。

開発したマイクロ流体チップ内電動ポンプは,さまざまな溶液に対して安定であり,ガラスバルブと組み合わせて用いることで,汎用的な集積化学システムへの応用が可能。特に,医療診断,1細胞操作,分子合成などの分野で有用なツールとなると期待できる。