東大と岡山大,超強磁場中で固体酸素の新しい相を発見

東京大学と岡山大学の研究グループは,酸素分子の新規な固体相を超強磁場下で発見した(プレスリリース)。酸素は低温や高圧力下で固相になり,これまでに7種類の相が見つかっている。固体酸素の結晶構造はその磁気的性質と深く関連することが知られているが,酸素の性質が強い磁場中でどのように変化するのかは分かっていなかった。

外部磁場は物質の磁気的性質を変化させる。酸素においても,新しい結晶構造を持った酸素の新規相が非常に強い磁場下で現れる期待があり,1980年代に磁場の効果が詳しく調べられた。しかし,当時の実験での最大磁場は50テスラでは,液相及び3種類の固相は磁場中でも安定であり,隣接する相へ,または新たな相への変化は見出されることはなかった。

今回,破壊型パルス磁場発生技術の1つである“一巻きコイル法”と呼ばれる世界的にもユニークな技術を用い,最大193テスラの超強磁場を発生させて固体酸素の磁場効果を探索した。採用した実験手法は,磁化測定と光透過スペクトル測定であり,最低−269℃までの極低温下で実験を行なった。その結果,固体酸素アルファ相に約120テスラ以上の強磁場を加えると,磁化の急激な増大と光透過スペクトルの劇的変化がほぼ同時に観測されることがわかった。

観測された変化は一次の相転移であることと一致。固体酸素アルファ相が別の結晶構造を持った新規相に一次相転移することの明確な証拠であると示唆された。光透過スペクトルの結果から,この新規相の固体酸素の結晶構造は高い対称性を持つ立方晶が期待され,磁気的には強磁性の特性をもつ可能性が高いと予測される。

酸素は身近でかつ重要な元素であり,今回の発見は酸素の理解を深める上で重要な知見。今後,酸素分子の有する機能への磁場効果を理解する上で,重要な役割を果たすと期待される。