横市大,自動車部品や体内埋め込み型材料に期待できる有機物の超弾性現象を発見

横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科教授の高見澤聡氏は,有機物(テレフタラミド結晶)による超弾性現象(有機超弾性)を発見した(プレスリリース)。この発見により,自動車部品などの材料の軽量化が求められる復元性を持つ構造材料,接合材,機械部品,振動吸収材等への応用や,インプラント(体内埋め込み型材料)などの生体適合性の高い医療材料等への広い応用が期待できる。

超弾性とは,擬弾性の一種であり,ゴムなどの普通の弾性とは全く異なる固体材料特性で,結晶構造の変化を介して機械的負荷によって弾性的に形状変化し,除荷後に元の形状に戻る特殊な性質をいう。超弾性はこれまで合金および僅かのセラミックスでのみ見い出されていた材料特性であり,最初の超弾性合金の発見からすでに80年以上経つが,有機材料での超弾性は知られていなかった。

今回,有機物で超弾性を初めて見い出したテレフタラミド結晶は,驚くほど小さい力で超弾性挙動を示す。結晶に機械的負荷をかけると,異なる結晶相への相転移が生じて結晶は変態する。機械的変形量は,結晶内での異なる結晶相の領域増大を生じる。

除荷されると異なる結晶相は減少し,変態前の元の形状に完全に戻る。100回までこの超弾性変形を繰り返す実験では材料疲労は全く見られなかった。超弾性材料はこれまで合金に限定されていたが,この研究成果は化学的手法によって材料特性制御可能な超弾性材料開発への扉を開くもの。

有機超弾性体は合金と異なり軽量かつ金属元素を含有しない特性がある。自動車部品などの材料の軽量化が求められる復元性を持つ構造材料,接合材,機械部品,微弱な振動吸収材などへの応用や,インプラント(体内埋め込み型材料)などの生体適合性の高い医療材料等への広い応用が期待できる。