東工大ら,新構造の酸化物イオン伝導体を発見

東京工業大学,茨城大学,豪州原子力科学技術機構(ANSTO)らの研究グループは,酸化物イオン伝導体の新しい構造ファミリーであるネオジム・バリウム・インジウム酸化物「NdBaInO4」を発見した。さらに,NdBaInO4の結晶構造の決定およびNdBaInO4における酸化物イオンの拡散経路の可視化にも成功した(プレスリリース)。

NdBaInO4は,BaCO3,In2O3 および Nd2O3 粉末を用いて,1400 °Cにおける固相反応により合成した。構造解析の結果,NdBaInO4の空間群は単斜晶系のP21/cであることが見いだされた。 NdBaInO4の酸化物イオンの拡散経路を結合原子価法により可視化したところ,酸化物イオンはA-O(Nd-O)ユニット内を2次元に移動できることもわかった。

純酸化物イオン伝導体および酸化物イオン-電子混合伝導体などの,酸化物イオン伝導性材料は,燃料電池,酸素分離膜およびガスセンサなどに幅広く応用されている。 酸化物イオン伝導度は結晶構造に強く依存するので,新しい構造ファミリーに属する新規酸化物イオン伝導体を発見すれば,酸化物イオン伝導体の応用の革新的発展へ向けた新しい扉を開けると期待されていた。

NdBaInO4の結晶構造解析にはJ-PARCに設置された茨城県の中性子回折装置,豪州ANSTOに設置された中性子回折装置,大型放射光施設SPring-8および高エネルギー加速器研究機構(KEK)放射光科学研究施設(PF)に設置された放射光X線回折計を用いられた。