京大,バイオマーカーを見分けて溶けるゲル状物質を開発

京都大学 大学院工学研究科教授の浜地格氏らは,疾病の指標(バイオマーカー)となる複雑な生体分子を識別して溶けるゲル状物質(ヒドロゲル)の開発に成功した(プレスリリース)。これはJST課題達成型基礎研究の一環としての成果。

ヒドロゲル(寒天のように水を固める物質)は生体適合性が高く,さまざまな医療・診断応用が期待され,その高機能化が進められている。しかし,ヒドロゲルが識別できるバイオマーカーはその分子構造が単純なものに限られていた。また,標的とするマーカーごとに応答する新しいゲル化剤(ゲルを形成する化合物)を開発する必要もあった。

研究グループは,新たなゲル化剤を開発し,ヒドロゲルが特定の化学反応によって溶けるように設計した。さらに,ゲルの中にその化学反応に必要な酵素を活性を保ったまま埋め込んだ。

このゲルはたった1種類のゲル化剤から作製できるが,埋め込む酵素を選ぶだけで標的とするバイオマーカー分子も変えることができる。その結果,多様な生体分子(糖尿病や前立腺がん、痛風のバイオマーカー)を識別して溶けるゲルを作製することに成功した。

また,異なる化学反応性を示す2種類のゲル化剤と数種類の酵素を混ぜることによって,複数のバイオマーカーが同時に存在してもしっかり見分けられるヒドロゲルも開発した。今後,新しいスマートマテリアルとして,診断材料や薬物放出材料の開発などの医療応用に期待できる成果。