カリフォルニア大,学習中の大脳皮質の神経活動を可視化することに成功

カリフォルニア大学 サンディエゴ校アシスタント・プロフェッサーの小宮山尚樹氏らは,運動学習中の大脳皮質にある「運動野」の神経活動を可視化することにマウスの実験で成功した。これは,JST課題達成型基礎研究の一環として得られた成果(プレスリリース)。

運動野の神経活動は,運動行動の制御に重要な役割を果たすと考えられ,運動野の神経活動と実際の運動行動は,密接で安定した関係があるとされてきた。しかし,運動学習によって,この関係がどう影響を受けているのか詳細は不明だった。その理由の一部は,学習期間中の神経細胞の活動を長期観察することが難しく,主に,運動学習後に実験を行なっていたため。

研究チームは2光子顕微鏡を用い,同一マウス個体の神経回路を2週間にわたって運動学習中の変化を可視化するイメージング手法を開発し,運動パターンとともに解析した。その結果,学習の当初の段階では,非常に似た運動パターンであっても神経活動パターンが異なること,学習が進むにつれて神経活動と運動の関係が固定され,学習した運動に特化した神経活動パターンが徐々に形成されることが分かった。

さらに,同じ学習中に神経同士のシナプス結合を観察したところ,学習中の神経活動パターンの変化が,運動野内での神経回路のつながり方自体の変化によるものである可能性が示唆された。

今回の結果は,脳の神経回路が,学習や経験によって柔軟に変化して形作られていて,固定されたものではないというこれまでの研究報告を強く裏付けるもの。この研究で開発された手法は運動学習以外にもさまざまな学習や行動の基盤を解明することに応用されることが期待される。また,こうした学習中の脳の詳細な理解が,将来的にアルツハイマー病など,学習や記憶に異常をもたらす病気の治療に役立つことも期待される。