名大ら,カーボンナノチューブの成長と炭化水素の燃焼プロセスに類似性があることを発見

名古屋大学と京都大学,米国のOak Ridge National Lab(ORNL),中国の研究機関らは,カーボンナノチューブ(CNT)の成長と炭化水素の燃焼プロセスに類似性があることを,量子理論を用いたコンピュータシミュレーションによって見出した。今回の研究は,今まで制御するのが難しかったCNTの合成,および炭化水素の燃焼プロセスへの理解を深めることに貢献するもの。

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CNTは,その特異的な物性および化学的な性質から,エレクトロニクス,光工学および物質科学の分野に応用が期待されている。これまで,CNTは高温・不活性ガスの存在下で炭化水素ガスを遷移金属触媒の上で反応させる,化学蒸着法(CVD法)を用いて合成されてきた。

しかしながら,CVDによって生成するCNTは,その直径や側面の構造を制御できない,という問題を有している。今回研究グループは,アセチレン分子(C2H2,炭素と炭素の間に三重結合がある分子)を用い,CNTの成長をコンピュータシミュレーションで解析した。

研究グループは,鉄(Fe38)の粒子とアセチレン分子を用いて,CNTが生成する反応をコンピュータでシミュレーションした。これまでの研究では,炭化水素が完全に炭素原子に分解された後にCNTが形成される,と報告されていたが,シミュレーションによって,主にアセチレン同士の結合が,炭素原子への分解と共に,CNTの合成過程で起こっていることが分かった。

また,これらは,炭素燃料の燃焼プロセスでよく見られる水素の引き抜き・アセチレン付加のメカニズムに似ていることが示唆される。一般に燃焼のプロセスは、炭化水素から水素の引き抜き・生成したアセチレン付加が繰り返し起こることで,煤(すす)のもととなる多環芳香族炭化水素(ベンゼン環を2つ以上有する化合物)を生成していると考えられている。非常に反応性の高いアセチレンラジカル(C2H・)中間体が継続的に生成され,多環芳香族炭化水素の成長を促し,すすが生成する。

CNTの生成過程にも同様の中間体が確認され,アセチレンラジカルが触媒として働いている。さらに,水素を多く含む炭化水素はCNT以外の副生成物を生成し,また,水素が少ない炭化水素はカCNTを生成するということが,今回明らかとなった。

研究グループでは今後,更に早い計算ツールを開発することで,CNTの合成および化石燃料の燃焼プロセスをより深く理解するための可能性を模索していきたいとしている。

詳しくは名古屋大学 プレスリリースへ。