東北大、活性酸素の強力な消去物質を発見

東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野教授の赤池孝章氏らは、アミノ酸の一種であるシステインに過剰にイオウが結合した活性イオウ物質が体内で生成され、さらにその物質が極めて強力な活性酸素の消去能力を発揮することで、生体内で主要な抗酸化物質として機能していることを発見した。

140415tohoku1

活性酸素は、ヒトを含めた好気性生物が酸素を使って生命活動を営む上で必ず発生する毒性物質。活性酸素が過剰に作られたり、活性酸素を取り除くための抗酸化システムがうまく働かなくなると、体内で活性酸素が過剰に蓄積し、酸化ストレス状態をもたらす。酸化ストレスが長く続き、慢性化すると、癌、動脈硬化症・メタボリックシンドロームや神経変性疾患などの様々な国民病や難病の高いリスク因子になることが明らかになっている。

これまでに赤池教授らの研究グループは、ヒトの細胞や動物実験などから、含硫アミノ酸であるシステインの代謝に関わる酵素シスタチオニン ベータ シンターゼ(cystathionine β-synthase:CBS)とシスタチオニン ガンマ リアーゼ(cystathionine γ-lyase:CSE)が酸化ストレスを低減する作用があることを報告してきた。しかしながら、この様な酵素がどのような仕組みによって酸化ストレスを軽減し改善するかについては不明だった。

今回の研究で、CBS や CSE が、システインにイオウが過剰に結合したシステイン・パースルフィドと呼ばれる活性イオウ物質を作り出すことを明らかにした。マウスを使った解析から、活性イオウ物質が、脳、心臓、肝臓などあらゆる臓器に存在し、また正常のヒト血液中にも豊富に存在することが分かった。

そこで研究グループは、これら活性イオウ物質が活性酸素に対してどの様に作用をするのか解析し、活性酸素を消去することで、生体内で極めて高い抗酸化活性を発揮することを発見した。さらに、細胞に CBS や CSE の遺伝子を導入して活性イオウ物質をたくさん作らせると、細胞が活性酸素の毒性によって障害を受けず強い酸化ストレス抵抗性を獲得することが確認された。

今回の研究結果は、活性イオウ物質が体内で活性酸素の働きをコントロールする極めて重要な役割を担っていることを明らかにした画期的な成果であると言える。今後、人間の体内で活性イオウ物質がどのように代謝・維持されているのか、またそれが病気の進展をどのように制御するのかを解明することで、酸化ストレスに関連する多くの病気の新しい予防法・診断法・治療法の確立へ大きく貢献するものと期待される。

詳しくは東北大プレスリリースへ。