理研、小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送機構の新たなモデルを提案

理化学研究所は、出芽酵母を使い、細胞内でタンパク質の修飾や仕分けなどを行なうゴルジ体のシス槽が、小胞体上に集積するcoat protein complexⅡ(以下、COPⅡ)小胞に接近、接触して積荷タンパク質を受け取る様子を可視化し、小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送機構の新モデルを示した。

140415riken1

ヒトや酵母を含む真核生物の細胞内には、細胞小器官と呼ばれるさまざまな膜構造体があり、その1つである小胞体では多種多様なタンパク質が作られている。これらのタンパク質はゴルジ体へと運ばれて種々の修飾を受けた後に、それぞれが働くべき目的地へと輸送されて細胞の生命活動に必要な機能を果たす。

この輸送機構の基本的な仕組みは全ての真核生物に共通だが、従来はCOPⅡ小胞と呼ばれる輸送小胞が小胞体で積荷となるタンパク質を乗せ、そこから遊離して細胞内を漂い、ゴルジ体のシス槽に運ばれると考えられていたもののこの仕組みは立証されていなかった。

研究チームは、独自に開発した高速高感度共焦点顕微鏡システム (SCLIM)を使用した出芽酵母細胞のライブイメージングにより、積荷となるタンパク質、COPⅡ小胞、ゴルジ体のシス槽、トランス槽をそれぞれ蛍光タンパク質で標識し、その挙動を調べた。その結果、シス槽が小胞体上に集積するCOPⅡ小胞に接触し、それに伴いCOPⅡ小胞の被覆タンパク質の蛍光シグナルが減少すること、トランス槽はそのような挙動を取らないことが分かった。

さらに小胞体へのシス槽の接触により、積荷タンパク質が小胞体からシス槽へと輸送されることも明らかになった。これらの結果から、研究チームは、COPⅡ小胞が細胞内を漂って標的となるゴルジ体のシス槽へと運ばれるのではなく、シス槽が小胞体に接触して積荷タンパク質を受け取ることで積荷の輸送が行なわれるという膜輸送の新たなモデルを提案した。

詳しくは理化学研究所 プレスリリースへ。