国立がん研究センターら,従来の約1/40の血液量で半日以内に診断可能な大腸がんの検査法を開発

国立がん研究センター研究所と塩野義製薬などの研究グループは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発」プロジェクトにおいて,従来の約40分の1の血液量で半日以内に大腸がんの診断が可能な検査手法を開発,実用化に向けた研究開発を開始した。

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大腸がんの検診方法としては便潜血検査法があるが,感度・特異度とも十分ではなく進行大腸がんにおいても陰性(偽陰性)を示すことがある。一方,精密検査としての大腸内視鏡検査は,前処置が必要なことや検査に対する恐怖心などから,便潜血検査で陽性となり要精密検査となっても受診率が6割程度と低いことが課題だった。

研究グループは,がん細胞に特異的なタンパク質や小さな核酸(マイクロRNA)を含むエクソソームを利用して,従来法では1日かかるエクソソームの検出をおよそ1.5~3時間に短縮し,検出に必要な血液(血清)の量も5マイクロリットルと簡便にすることが出来る方法を開発した。

さらに,大腸がん細胞が分泌するエクソソームに多く含まれるタンパク質の存在を明らかにし,大腸がん患者の血液(血清)から大腸がんが分泌したエクソソームを検出した。また,大腸がん患者と健常人の血清を解析した結果,従来の血液検査(腫瘍マーカーCEAやCA19-9)と比較して,この方法は診断能の基準であるAUCが高い結果となった。さらに従来の血液検査では見つけることが出来なかった早期がんの検出の可能性があることも確認した。

今回の方法は,大腸がんのほか早期発見の難しいすい臓がんや,さらにはがん以外の疾患に対する新たな診断法として期待できるもの。また,検査方法も,採血だけでなく尿や唾液などへの応用も可能。NEDOは引き続きこの研究開発を支援し,臨床現場で使用できる小型質量分析計との組み合わせによる実用化を目指す。

詳しくはNEDO ニュースリリースへ。