京大,海洋天然物ヘロナミド類の抗真菌作用メカニズムを解明

京都大学の研究グループは,海洋由来の微生物が産生するヘロナミドという低分子化合物が細胞膜脂質を標的にして抗真菌活性を示すことを明らかにした。酵母に対して低濃度で生育阻害を示す海洋天然物ヘロナミドは既存薬とは異なる様式で細胞膜を標的にすることが明らかになったことで,新しい創薬シーズと創薬標的の提案が期待できる。

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細胞膜はタンパク質や糖質,脂質からなる構造体で,細胞の内外を仕切るバリアとしてだけでなく,細胞を形づくり,細胞外からの刺激を細胞内に伝えるなどの大切な機能を担っている。現在,生体膜を構成する脂質分子の役割を理解するために,二つの基本的な考え方が提唱されている。

その一つは流動モザイクモデルで,もう一つは脂質ラフトモデル。前者では脂質は膜に存在するタンパク質の溶媒としてとらえられ,後者では,脂質分子も集合体(脂質ラフト)を作るなどしてタンパク質の機能を制御したり,もしかするとそれ自身が機能を持つという考え方をする。

この研究では,生体膜脂質と相互作用することでユニークな現象を引き起こす化合物を天然資源から探索した結果,海洋由来の微生物である放線菌が産生するヘロナミドCと8-デオキシヘロナミドC(新規化合物)という化合物を取得。

表面プラズモン共鳴(SPR)解析によって両化合物がスフィンゴミエリンに代表される飽和の炭化水素鎖を持つリン脂質に強く結合することが明らかとなり,特定の膜脂質を認識することを明らかにした。

詳しくは京都大学 プレスリリースへ。