理研ら,慢性疲労症候群と脳内炎症の関連を解明

理化学研究所(理研),大阪市立大学,および関西福祉科学大学は,慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎(CFS/ME)の患者は健常者と比べて脳神経の炎症反応が広く見られることを陽電子放射断層画像法(PET)で確認し,炎症の生じた脳部位と症状の強さが相関することを突き止めた。

CFS/MEは,原因不明の疲労・倦怠感が6カ月以上続く病気。感染症や過度の生活ストレスなど複合的な要因が引き金になり,「疲れが取れない」という状態に脳が陥るためと推測されている。しかし,その詳しい発症メカニズムは分かっておらず,確実な治療法もまだない。仮説の1つとして脳内炎症の関与が示唆されていたが,これまで証明されたことはなかった。

共同研究グループは,神経炎症に関わる免疫担当細胞であるマイクログリアやアストロサイトの脳内での活性化を,CFS/ME患者および健常者を対象としたPETで観察した。その結果,CFS/ME患者の脳内では広い範囲で炎症が生じていることを確認した。

さらに,それぞれの患者の症状の強さと脳内炎症の生じた部位の関係を調べたところ,扁桃体と視床,中脳は認知機能に,帯状皮質と扁桃体は頭痛や筋肉痛などの痛みに,海馬は抑うつ症状と相関することが分かった。

これらの結果はCFS/ME患者の脳機能の低下に脳内炎症が関わっていることを示す証拠となるもの。今後,脳内炎症のPET診断によりCFS/MEや慢性疲労の理解が進み,客観的に測定可能な指標に基づく診断法の確立や,根本的な治療法の開発につながることが期待できる。

詳しくは理研 プレスリリースへ。