産総研,アモルファス金属酸化物の原子構造の解析に成功

産業技術総合研究所(産総研)ナノシステム研究部門 非平衡材料シミュレーショングループ主任研究員の西尾憲吾氏らの研究グループは,第一原理計算によってアモルファス金属酸化物の原子構造を解明することに成功した。

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アモルファス金属酸化物については,その原子構造に対する十分な知見があれば,材料の均一性と電気的絶縁性を両立させるプロセス条件などを合理的に設計することが可能になると期待されている。しかし結晶金属酸化物と異なり原子構造が複雑であるため,これまで包括的な理解がなされていなかった。

研究グループは,7種 類 の 金 属 酸 化 物(TiO2,ZrO2,HfO2,Cu2O,Al2O3,Ga2O3,In2O3)に対してアモルファス構造の第一原理計算を行なった。図は7つの金属酸化物のうち,Al2O3で見つかった金属原子,および酸素原子の20面体配列。球をランダム充填すると五角両錐形構造が多く含まれることが知られており,五角両錐形構造から作られている20面体構造を含むことから,アモルファス金属酸化物の構造は,金属と酸素がそれぞれ球のランダム充填構造を形成して両者が組み合わさってできていることが強く示唆される。

五角両錐形構造がアモルファス金属酸化物に含まれることを定量的に調べるため,最近接する金属原子間および酸素原子間の二等分面で囲まれる多面体(ボロノイ多面体)を計算機上で構築し,ボロノイ多面体を構成する面に含まれる辺の数を数え,面の形の分布を調べた。

さらに,球のランダム充填構造の例としてレナード−ジョーンズポテンシャルで相互作用する粒子系のアモルファス構造に対しても同様の解析を行なったところ,金属の種類や酸素含有量に関係なく,金属と酸素ともに,ボロノイ多面体を構成する面の形は5角形が最も多く,レナード−ジョーンズポテンシャル系と同じ結果になっている。

このことから,アモルファス金属酸化物の構造は,金属と酸素がそれぞれ球のランダム充填構造を形成していることがわかった。研究グループは,今回明らかになった中距離秩序の知見を利用し,さまざまなアモルファス金属酸化物材料の原子構造を合理的にモデリングできる手法の開発につなげていく。

詳しくは産総研 研究成果へ。