NIES,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を用いたメタン収支の推定結果を発表

環境省,国立環境研究所(NIES)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」は,世界初かつ唯一の温室効果ガス観測専用の衛星で,二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測することを主目的とし,平成21年1月23日の打上げ以降,現在も順調に観測を続けている。

メタンカラム平均濃度の月別全球分布(2.5度メッシュ平均)の例

NIESはメタン濃度の「いぶき」による観測データと,地上観測点における観測データとを用いて,平成21年6月から平成23年5月までの2年間について,全球の月別・地域別の正味のメタン収支(消失と放出の総量)を推定した。

月別・地域別のメタンの正味収支量の推定値から,地球全体で見るとメタン放出量の多い地域が複数分布しており,それらの地域は人口密度の高い地域とおよそ一致していること,東南アジア域や,南米及びアフリカの南亜熱帯地域のメタンの放出が特に多いことがわかるなど,「いぶき」観測濃度データの有用性が明らかになった。

また地上観測データのみによって推定したメタン収支量に比べて,「いぶき」により得られた観測データを加えることにより,より精度の高い(不確実性の低い)メタン収支量の推定値が得られ,放出量の多い地域と季節が明らかになった。

二酸化炭素の吸収排出量に加えてメタンの収支量も精度が高く推計できるようになるなど,「いぶき」のデータは全球炭素循環の研究の進展に貢献し,その結果,気候変動予測の精度が向上し,将来のより効果的な地球温暖化対策の政策立案にも資することが期待される。

今般得られたメタン収支量の結果は,国内外の専門分野の研究者による確認ののちに,本年夏までに一般ユーザに公開する予定。

詳しくはNIESプレスリリースへ。