三菱電機と九大,低価格で短時間測定が可能な放射能分析装置を開発

三菱電機と九州大学の開発チームは,食品などに含まれる放射性核種を短時間に測定し,同時に低価格化を実現する放射能分析装置を開発した。

開発した放射能測定装置のプロトタイプ

福島第一原発事故後,食品などの放射性セシウムを計測するニーズが高まっており,測定の迅速化と装置の低価格化が求められている。しかし,放射能分析に通常用いられるゲルマニウム半導体検出器は,測定対象となる放射性セシウムが微量な場合,測定に多くの時間を要することに加え,液体窒素による冷却が必要なため運用に要する費用が高く,また装置も高価だった。

一方,汎用のヨウ化ナトリウムシンチレータはゲルマニウム半導体検出器よりも短時間で測定ができ,さらに冷却不要で安価という利点があるが,放射能の分析能力に課題があった。

今回開発チームは,ヨウ化ナトリウムシンチレータに信号復元技術を適用した放射能分析装置を開発した。放射能を分析するためには放射線のエネルギーを正確に識別することが必要。従来不十分だったヨウ化ナトリウムシンチレータのエネルギー識別性能を高めるため,放射線のエネルギーに応じた検出器の物理特性の違いを利用して,放射線のエネルギーを正確に復元する手法を新たに開発した。

この手法により,食品中の放射性セシウム134,セシウム137からの放射線や自然放射線を高精度に識別し,短時間で放射能濃度を測定することを可能とした。例えば,2kgの一般食品の場合,検出下限25Bq(ベクレル)/kgを1分で測定できる。これは従来の一般的なゲルマニウム半導体検出器に比べて約10分の1の短時間であり,さらに安価にこの測定性能を実現することができる。

開発チームは今後,平成26年4月よりプロトタイプの実証試験を被災地(福島県)にて開始する(製品発売は平成26年度中を予定)。また検査試料の準備作業にかかる負担を減らすために,少量試料(数百ミリリットル)での測定にも対応できるようにするなどの改良開発を同時に進めるとしている。

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