理研と大阪市大,銅の代謝異常をPETによる動態イメージングで診断することに成功

理化学研究所(理研)と大阪市立大学は,先天性銅代謝異常症「メンケス病」の治療において,銅と銅キレーター(金属イオンと配位結合し錯体を形成する物質)を併せて投与することが,中枢神経障害や腎障害の予防に効果がある可能性を明らかにした。これはメンケス病モデルマウスを陽電子放射断層画像法(PET)で撮像し,銅代謝の改善を確認した結果によるもの。

脂溶性キレーター「ジスルフィラム」併用による銅の脳内移行の促進

メンケス病は,腸管での銅吸収障害による銅欠乏のため,中枢神経障害や結合組織障害が起こる先天性銅代謝異常症の1つ。標準的な治療法はヒスチジン銅の皮下投与だが,治療開始が生後2カ月を過ぎると投与した銅が脳に移行しなくなり,脳障害が改善せずに合併症を併発して多くは幼児期に死亡する。

一方,長期の銅注射は腎臓の尿細管に銅が蓄積するため,将来的に腎障害をきたすことが懸念されている。従って、投与した銅の脳への移行を促進させ,かつ腎臓への蓄積を抑制する効果的な治療法の開発が求められている。

共同研究グループは,メンケス病モデルマウス(マクラマウス)に放射性銅(64CuCl2)と脂溶性キレーターを併せて投与した。すると,脳への銅の移行性が顕著に増加した。一方,水溶性キレーターの併用では,腎臓からの銅の排泄が促進された。いずれも銅の放射性同位体64Cuを組み込んだ分子(64CuCl2)をトレーサーとしたPETによる画像診断で明らかにした。

この結果は,メンケス病は銅キレーターの併用により,生後2カ月以降でも症状が改善できる可能性を示唆している。また,今回用いた64Cuを用いたPETによる画像診断は,銅代謝異常症の新しい治療法の開発や評価に有用であることも分かった。

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