東大ら,低エネルギーメモリにつながる量子臨界性をキラルスピン液体に発見

東京大学とゲッティンゲン大学の研究グループは共同で,自発的ホール効果を示すPr2Ir2O7の純良単結晶を用いてその磁気熱量効果を測定したところ,高温超伝導体でも見られる物質の特異な性質である,量子臨界現象をゼロ磁場で発現することを発見した。

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この量子臨界性は,巨大な自発的ホール効果が見られるキラルスピン液体相(磁性を担うイオンに束縛された各電子のスピンの向きが,時間的にも空間的にも一定の方向に留まらず,揺らいでいる状態)の周りでのみ発現していることから,自発的ホール効果の発現機構に重要な役割を担っていることが期待される。

現在のCPUの揮発性メモリは,電力を供給しないと記憶している情報を保持できないため,消費電力が大きいという欠点がある。一方で,不揮発性メモリはメモリ維持のための電力を必要としないために,低エネルギー消費の情報処理を実現する上で不可欠。そこで,単層で作動する構造的に単純なホール素子を用い,異常ホール効果を利用した電力の散逸を大幅に削減した新しいメモリ機構が注目されている。

この新しいメモリ機構の候補として,以前,東京大学が発見したゼロ磁場かつ磁化のない状態で自発的に現れるホール効果(自発的ホール効果)を利用したものがある。自発的ホール効果は,エネルギー損失や発熱がなく,従来の異常ホール効果を凌ぐ大きな信号が弱磁場で得られるなどの長所がある。しかし,自発的ホール効果が現れる機構は分かっておらず,不揮発性メモリの基盤的な技術の開発が求められていた。

研究グループが発見した臨界性は従来の磁性の枠組みでは説明できず,新たな理論が必要となる。また,新しい自発的ホール効果,それを用いた今後のホール素子に基づくメモリ機構の開発のための重要な一歩となると期待される。

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